『プリンセス・トヨトミ』

万城目学

(2009年3月1日刊行,文藝春秋,税込定価1,650円,512 pp.,ISBN:9784163278803版元ページ

京都の「鬼」の次は,奈良の「鹿」,そして三都物語の最後の大阪はコレできましたか.ヒミツの「合図」とともにグローバル・パターンを目指して,いっせいに動き出す大阪のオトコたち.私たちが訳したカマジン本では,「リーダー」による指令(すなわち「合図」)に基づくパターン形成は,自己組織化ではない典型例だ.『プリンセス・トヨトミ』の場合,もちろん「うわべの影のリーダー(♂)」が大坂城まわりのグローバル・パターンの総指揮をとっているのだが,人口の残る半分を占めるオンナたちはいったい何をしていたのか(それは最後にわかる).このようなオモテとウラの大阪,さらにオトコとオンナの世界を分断するプロットのなかで,必然的にオモテとウラを行き来するだけでなく,たまたま個人的事情でオトコとオンナの世界をも行き来することになった「大輔」くんこそ,頼りなげでありながら,実は主役だったのだ.