『Биологическая систематика. Эволюция идей』

И. Я. Павлинов, Г. Ю. Любарский (I. Ya. Pavlinov and G. Yu. Lyubarsky)

(2011年刊行,Труды Зоологического музея МГУ, т.51 [Archives of the Zoological Museum of Moscow State University, vol. 51], 667 pp. + 1 color plate, Товарищество книжных изданий КМК [KMK Scientific Press Ltd.], Москва, ISBN:9785873176854

英訳すれば『Biological Systematics: Evolution of Ideas』というタイトル.生物体系学史に関する大著.700ページ近くある.目次の英訳は筆頭著者のパブリノフ教授自身が公開している→ pdf.パブリノフさんとは1998年の Hennig XXVII(サンパウロ大学)で一度だけお会いしたことがある.

なお,Systematic Biology 誌の最新号に本書の書評が載っている:Alexey Shipunov, Systematic Biology, 61 (3): 546-547 (2012). doi: 10.1093/sysbio/syr125 → html.最近の同誌では非英語圏の書籍紹介がされることはほとんどなかったので例外的.この書評の冒頭で,ロシアにおける科学書・科学論文における「言語」の問題に言及されていて興味深い.書評者によれば,1920〜30年代のロシア科学界では母語であるロシア語の論文や本には必ず英・独・仏の要旨なり解題が付けられていた.しかし,1940年代以降この「伝統」は喪われ,非ロシア語での研究発表は推奨されなくなり,ロシア語圏の内外での言語の「壁」が高くなったという.ペレストロイカの到来でその「壁」が壊されるかと思いきや,現実はまったく逆で,21世紀のロシア科学界では「ロシア語のみで書かれた論文しか受理しない」という厳しい条件を要求する雑誌さえ出現しつつあるらしい.

ロシア語にかぎらず,科学を語る「ことば」の問題は世界中でさまざまな形をとって浮き沈みしているのだろう.

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