『これからのエリック・ホッファーのために:在野研究者の生と心得』

荒木優太

(2016年3月1日刊行,東京書籍,東京, 255 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784487809752目次エン-ソフ版元ページ

仙台一番町〈あゆみBOOKS〉にてゲット.メインタイトルだけではいったい何の本だか皆目見当がつかなかったが,サブタイトルを見て即座にレジにお連れした.本書の「在野研究者」とは「狭義の学術機関に頼らずに学的な営みをつづけてきた研究者たち」(p. 5)という意味で用いられている.本書で取り上げられている16人の「在野研究者」たちはすべて故人だが,著者は,先人たちの在野研究人生から学び取れるさまざまな教訓を全40箇条の〈在野研究の心得〉としてまとめている.

本書は「文系」の研究分野を念頭に置いて編まれているので,大学の「なか」か「そと」かが在野であるかどうかの分かれ目になっている.ワタクシたちのように,大学の「そと」なんだけど,研究機関に場所を占めている研究者はいささか宙ぶらりんな立ち位置になってしまうが,本書から得るものはきっとあるだろう.研究する人生の “軸” は複数なので,ひとりの研究者のある軸を見れば「なか(=非在野)」だけど,別の軸では「そと(=在野)」という多面性は多かれ少なかれきっとあるだろうから.

ワタクシは「在野研究者」の “失敗例” をいくつか見たことがあるので,本書に取り上げられているような “成功例” との差が何に起因しているのかが気になる.大域的な共通要因と局所的な個別要因の両方があるのは当然だろうけど.

そういえば,昨年の8月26日に産総研・江渡浩一郎さんのところで開催したニコニコ学会β〈ラヂオ横の会〉で, “野生の研究者” たちはどうすれば生き延びられるだろうかという話をしたことを思い出した(→ 日録2015年8月26日).たとえいまは大学や研究機関の「なか」にいられたとしても,いずれは「そと」に出ることになる.そのとき “野生” のなかで研究者がどう生きていくのかという話.「なか」にいるうちは見えないことが,「そと」に出たとたんに見えてしまう.



追記:2016年3月23日]読了. “在野研究者” 16人の評伝から汲み取れる “心得” を記すというスタイルは読みやすかった.全40の “心得” がどれくらい広く当てはまるのかは問題ではない.むしろ “在野” で研究を続けるときの “行動オプション一覧” と考えればうなずける.