千葉聡
(2023年3月10日刊行,みすず書房,東京, iv+417+36 pp., 本体価格3,200円, ISBN:978-4-622-09596-5 → 目次|版元ページ)
これはとんでもない良書なのでみんな正座して読むように.天敵防除の歴史と理念と失敗例が掘り起こされている.現代の保全生物学とのつながりも見える. “天敵” をキーワードに,生物どうしの関わり合いと人間模様を歴史的なエピソードをはさみつつ描き出す.ワタクシ的には著者の文体はとても心地よい.これは近年まれに見る好著で,分野を問わず潜在的読者層は広がるのではないだろうか.とくに,イデアとしての「自然のバランス」が変容しつつも連綿と継承されていくありさまは科学史上のテーマとしても興味深く読める.一般読者に必ずしもなじみのない昆虫や陸貝(や人物)を配役する著者の手腕は絶妙で,ワタクシは即座にあのグールドを思い出してしまった.
ワタクシの書評は今月中に紙面掲載される予定.