『山と雲と蕃人と:台湾高山紀行』

鹿野忠雄

(2002年2月22日,文遊社,ISBN:4892570370



1941年の初版本の復刻と合わせて,中国語版(台湾)からの脚注と解説を載せ,さらに関係者の記事を含む.『明治の冒険科学者たち:新天地・台湾にかけた夢』(2005年3月20日刊行,新潮新書108,ISBN:4106101084)の著者である柳本通彦氏の解説記事も.鹿野忠雄は1930年代に台湾の山々を踏破し(初登頂も含む),その際,同行した台湾先住民と起居をともにしている.本書はその登山記録を主とするが,博物学者らしく台湾山系の動植物や民俗の詳しい日録を残した.貴重な記録写真も掲載されている.好戦的な先住民部族による〈首狩り〉を気にかけつつも,ひたすら山頂を目指す気概が行間からにじみ出る.本書が〈台湾山岳文学〉の代表作品と評されるのももっともなことなのだろう.