石原あえか(編)
(2012年3月31日刊行,慶應義塾大学出版会[慶應義塾大学教養研究センター選書・11],東京,94 pp., 本体価格700円,ISBN:9784766419337 → 版元ページ)
本書は100ページもない新書サイズのブックレットながら,情報量はとても豊富.まずは,第1章「イェーナ大学附属産院と専属絵画教師 詩人ゲーテとその周辺」を読む.ゲーテにからむ医学と芸術の連携.ロマン主義科学の時代は科学と芸術は境目がなかった.同時に,この章では“助産婦=女性” から “産科医=男性” へという近代ドイツ医学の中での「出産」の位置づけがどのように変遷したかが読み取れる.イェーナで活躍したゲーテと同時代の医者・解剖学者はスコットランドの外科医ウィリアム・ハンターの影響をどこかで受けているらしく,彼の解剖学(とくに写実的な解剖図のスタイル)がドイツに影響を与えたようです.たとえばドレスデンで名声を得た解剖学者・画家のカール・G・カルスは医学を学びにわざわざイングランドとスコットランドを旅したとのこと.
【目次】
はじめに(石原あえか) 3
第1章:イェーナ=ヴァイマル —— イェーナ大学附属産院と専属絵画教師 詩人ゲーテとその周辺(石原あえか) 9
1. イェーナ大学附属産院創設の歴史
2. ゲーテとヴァイマルの「自由絵画学校」
3. ベルトゥーフが出版したローダーの『人体解剖図大全』
4. イェーナ大学専属絵画教師ルーとゲーテ
5. フロリープ父子 —— ベルトゥーフの後継医師達
第2章:ドレスデン —— カール・グスタフ・カールス 科学と芸術の融合(眞岩啓子) 33
1. 幼年時代とライプツィヒ時代
2. ドレスデンでの活躍
3. 宮廷侍医として
4. カールスと医学
5. 科学と芸術の融合 —— 「風景画論」とゲーテ
6. 描くことの意味
第3章:イギリスからの視座 —— 表象としての「解剖図」(横山千晶) 57
1. 身体を描くということ —— 美術と医学の濃密な関係
2. 「産む」ことと産婦人科学
3. 「幸福な家庭」という表象とサブテキスト
4. 物から身体へ,身体から物へ —— フランケンシュタインの被造物
5. 解剖図としての『フランケンシュタイン』
あとがき(石原あえか) 82
文献案内 84
執筆者紹介 93