『土とワイン』感想

アリス・ファイアリング,スカリーヌ・ルペルティエ[小口高・鹿取みゆき(監修)|村松静枝訳]
(2019年12月28日刊行,エクスナレッジ,東京, 471 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-7678-2651-6目次|a href="http://xknowledge-books.jp/ipscs-book/BooksApp;jsessionid=69DE0922A3B0DCA5C432BCA6BC26BD74?act=book&isbn=9784767826516">版元ページ)

基盤岩から迫るワインの風味.まず地質があって,それに適した葡萄が栽培されて,発酵の祭典へ.とらえどころがない “テロワール” という概念は,イアン・タッターソルとロブ・デサール『ワインの自然誌』(『ビールの自然誌』姉妹本)には「地霊(ゲニウス・ロキ)みたいなもの」と書かれていた.そのテロワールの基底にある地質に着目した本書は多くの読者にはきっとおもしろいと思う.著者はワインの有機栽培にこだわり,できたワインの嗜好にもはっきり方向性がある.文中にときどき “フルーツ爆弾” という罵倒語(?)が出てきて何のことかと思ったら,ワタクシがお肉とともによく飲んでいる南米の(本書では言及なし)ワイン大産地の赤ワインだった.そーか.あえて注文を付けるとしたら,地図や図表がほとんどまったくないという点.フランス,イタリア,スペインのワイン産地をマップなしで説明されてもつらいものがある.また, “テロワール” は「地理的権威主義」と表裏一体だそうなので,できれば地質図があった方がよかったかも.