『椿説泰西浪曼派文学談義』

由良君美

(2012年7月10日刊行,平凡社平凡社ライブラリー・767],東京,本体価格1,700円,ISBN:9784582767674目次版元ページ

本書の巻末に載っている高山宏による解説「修羅の浪漫」のなかで,由良の文体について次のように述べられている:

「 」とは別に,それまで余り見慣れていなかった〈 〉が入り乱れ,〈 〉の付いた〈知〉が頻出するのがいかにも一九七〇年代のファッションである.(p. 391)

そーか,山括弧〈 〉は「一九七〇年代のファッション」だったのかー.ワタクシが書く文章でも〈 〉が頻出する.ほとんど意識したことはなかったが,他の人からは「ユニークな〈 〉の使い方」と言われたことが以前ある.

こういうときに絶大な威力を発揮するのが,小学館辞典編集部(編)『句読点、記号・符号活用辞典。』(2007年9月17日刊行, 小学館ISBN:9784095041766目次).この辞書の山括弧〈 〉の項目(pp. 94-98)には,数々の引用例が載っている.固有名詞の表記やキーワードの表示として用いられるとのことなので,まちがった使い方はしていないと思うが,「一九七〇年代のファッション」という視点は欠けていた.

—— 確かに,〈知〉と書かれると〈山口昌男〉をすぐ連想してしまう.