『近代日本の酒づくり:美酒探求の技術史』

吉田元

(2013年12月13日刊行,岩波書店,東京,xii+261+5 pp., 本体価格2,800円, ISBN:978-4-00-025934-7版元ページ

歴史的背景を踏まえた明治以降の日本酒づくりについて,多くの図版とともにていねいに説明してある良書.前半第4章までは,明治以降の日本酒づくりの詳細.とくに「酛づくり」の技術が詳しく説明されている.続いて,合成清酒(第4章)と四季醸造(第5章)について.とくに第4章には戦前戦後の理化学研究所が携わった「合成清酒」研究に言及している.旧理研発のベンチャー企業のうち〈理研肝油〉がもっとも成功した例とするならば,合成清酒理研酒〉もそれに匹敵する成功をおさめたとのこと.仁科芳雄所長に要請されて戦後の理研での合成清酒研究を率いたのが,かの坂口謹一郎だった(p. 128).この “合成清酒” の技法がのちに悪名高い「三倍醸造酒」の浸透につながっていく.本書後半は戦後の日本酒業界の話.戦前戦後の海外での酒造についても言及.台湾・朝鮮・中国・ハワイ・アメリカ本土・カナダ・ベトナム.あとがきのことば:「定年後は授業も会議もなくなったので,毎日酒のことを考えつつ,執筆に専念できた」(p. 259).いいね!いいね!いいね!