『読む・打つ・書く —— 読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々』目次案

三中信宏
(2021年6月刊行予定,東京大学出版会,東京)

駒場から再校ゲラ一式が着弾した.ワタクシの “書痴本” は東京大学出版会創立70周年記念出版の一冊として6月に刊行予定.着弾した再校ゲラを必死のパッチで読まないと! 

同封されていた〈東京大学出版会創立70周年記念リーフレット〉の宣伝文句:

「ようこそ,みなかワールドへ! 理系研究者を生業としながら,数多の本を読み,新聞やSNSに書評を打ち,そしていくつもの単独書を出版してきた著者が次世代の人たちへ贈る熱いメッセージ.さあ,まずはたくさん本を読もう」

ノンブルはまだ確定していないが,目次案は下記の通り:

目次案(2021年3月16日版)
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本噺前口上 —— 「読む」「打つ」「書く」が奏でる “居心地の良さ”

プレリュード —— 本とのつきあいは利己的に

 1. 読むこと:読書論
 2. 打つこと:書評論
 3. 書くこと:執筆論

第1楽章 「読む」—— 本読みのアンテナを張る

 1-1. 読書という一期一会
 1-2. 読む本を探す
  1-2-1. 探書アンテナは方々に張る
  1-2-2. “ランダム探書” がもたらす幸運
  1-2-3. 多言語が張る読書空間の次元
 1-3. 本をどう読むのか?: “本を学ぶ” と “本で学ぶ”
 1-4. 紙から電子への往路 —— その光と闇を見つめて
  1-4-1. 検索の舞台裏で
  1-4-2. タイプとトーク
  1-4-3. 薄切りされる電子本
  1-4-4. 知識の断片化と体系化
 1-5. 電子から紙への復路 —— フィジカル・アンカーの視点
  1-5-1. その電子本の原本は何か
  1-5-2. 物理的存在としての “フィジカル・アンカー”
  1-5-3. 電子本と原本との対応:ヘッケル『生物の一般形態学』を例に
 1-6. 忘却への飽くなき抵抗 —— アブダクションとしての読書のために
 1-7. “紙” は細部に宿る —— 目次・註・文献・索引・図版・カバー・帯
 1-8. けっきょく,どのデバイスでどう読むのか

インターリュード(1):「棲む」—— “辺境” に生きる日々の生活

 1. ローカルに生きる孤独な研究者の人生行路
 2. 限界集落アカデミアの残照に染まる時代に
 3. マイナーな研究分野を突き進む覚悟と諦観

第2楽章 「打つ」—— 息を吸えば吐くように

 2-1. はじめに:書評を打ち続けて幾星霜
 2-2. 書評ワールドの多様性とその保全豊崎由美『ニッポンの書評』を読んで
 2-3. 書評のスタイルと事例
  2-3-1. ブックレポート的な書評:山下清美他『ウェブログの心理学
  2-3-2. 長い書評と短い書評:隠岐さや香『文系と理系はなぜ分かれたのか』
  2-3-3. 専門書の書評(1):倉谷滋『分節幻想』
  2-3-4. 専門書の書評(2):ジェームズ・フランクリン『「蓋然性」の探求』
  2-3-5. 闘争の書評,書評の闘争(1):Alan de Queiroz『The Monkey’s Voyage』
  2-3-6. 闘争の書評,書評の闘争(2):金森修『サイエンス・ウォーズ』
 2-4. 書評頻度分布の推定とその利用
  2-4-1. 書評執筆実験の試み:岡西政典『新種の発見』を素材として
  2-4-2. 頻度分布からわかること:書評の平均と分散と外れ値
  2-4-3. 書評者は著者と読者にいつも評価されている
 2-5. 書評メディア今昔:書評はどこに載せればいいのか
 2-6. おわりに:自己加圧的 “ナッジ” としての書評

インターリュード(2):「買う」—— 本を買い続ける背徳の人生

 1. 自分だけの “内なる図書館” をつくる
 2. 専門知の体系への近くて遠い道のり
 3. ひとりで育てる “隠し田” ライブラリー

第3楽章 「書く」—— 本を書くのは自分だ

 3-1. はじめに:“本書き” のロールモデルを探して —— 逆風に立つ研究者=書き手
 3-2. 「読む」「打つ」「書く」は三位一体
  3-2-1. 知識の断片から体系へ —— 本の存在意義
  3-2-2. 学術書と一般書は区別できるのか
  3-2-3. ライフスタイルとしての理系執筆生活
 3-3. 千字の文も一字から —— 超実践的執筆私論
  3-3-1. 言わぬが花,知らぬは恥 ……『過去を復元する』『生物系統学』
  3-3-2. 前を見るな,足元だけ見よ ……『系統樹思考の世界』『分類思考の世界』
  3-3-3. “シルヴィア前” と “シルヴィア後”
  3-3-4. いかなる進捗もすべて晒せ ……『系統樹大全』
  3-3-5. 「整数倍の威力」:塵も積もれば山となる ……『統計思考の世界』『思考の体系学』『系統体系学の世界』
 3-4. まとめよ,さらば救われん —— 悪魔のように細心に,天使のように大胆に
  3-4-1. チャートとしての目次
  3-4-2. 土俵としての文献リスト
  3-4-3. “初期値” からの山登り:書いた文章を作品にするには
  3-4-4. 註をどうするか
  3-4-5. 本文テクストと図版パラテクストの関係
  3-4-6. その他のパラテクストたち:索引・カバー・帯
 3-5. おわりに:一冊は一日にしてならず ……『読む・打つ・書く』ができるまで

ポストリュード —— 本が築く “サード・プレイス” を求めて

 1. 翻訳は誰のため?:いばらの道をあえて選ぶ
 2. 英語の本への寄稿:David. M. Williams et al.『The Future of Phylogenetic Systematics』
 3. “本の系統樹” : “旧三部作” から “新三部作” を経てさらに伸びる枝葉

本噺納め口上 —— 「山のあなたの空遠く 『幸』住むと人のいふ」

 

謝辞
文献リスト
事項索引
人名索引
書名索引